軽度外傷性脳損傷
交通事故の怪我が主ですが、その他にもゆさぶりっ子症候群やホットショット、ボールが当たったり階段から落ちたり転倒したり、そういった場合に軽度外傷性脳損傷は起こります。
たいていは半年から1年も経てば治りますが、稀に重篤な後遺障害が残る場合もあります。
めまいや耳鳴り・意識障害などその症状はさまざまですが、軽度外傷性脳損傷の場合、MRI画像やCT画像で異常所見が見つかることはありません。
脳外傷があっても小さすぎて映らないのです。治療方法も分かっていません。病院に行っても治すことができないため、その苦しみは一生続くのです。
交通事故などでなった場合、ほとんどの方が頸部捻挫やむち打ち症と診断されます。これらの場合、一般的には治療期間が長期化することはありません。
80パーセントの人は1ヶ月以内には治療が修了しますし、6ヶ月以上というのはたった3パーセント程度です。
しかし、経過が長いことを訴えても気のせいだろうと軽視されるという現状があります。
軽度外傷性脳損傷であることを診断するには綿密な神経診断学や関連の各科の検査が必要です。それによって中枢神経系が損傷されていることが判明します。
認められれば正当な補償や賠償が伴うのですが、なかなかそこまでは至らないのが現状なのです。
ただ、欧米では認められた疾患概念となっており、日本でも軽度外傷性脳損傷友の会などを通じて被害者たちが立ち上がり、認められるための運動はしています。
国に訴えかけるとともに、実際になっている人たちの病気の相談や、病院・弁護士・労務への橋渡しをおこなっているのです。
症状の出方には個人差があるため、気がつかないままの日ともいます。MRIなどに写っていないことから、心因性や不定愁訴・詐病などという診断もあります。
ボールが当たっただけでなることもあるので、実際には自身もなっている可能性はあります。もしも何らかの不調があり、診断を受けてもいつまでたっても治らないのであれば、疑ってみてもよいでしょう。
交通事故を装ってわざと車にぶつかり、高額な慰謝料を請求する当たり屋のケースもあるので、保険が適用するまでにはなかなか大変なことです。
ただ、個人で一生苦しみ続けるよりは、交通事故の専門の弁護士などに相談してみるのも手です。
友の会などの働きかけによって、少しずつ国も認め始めています。労災の障害等級などを決めるための検討は行なわれてきています。
軽度外傷性脳損傷について
- 頭に強い衝撃が加わったことが原因で、脳が傷ついたり出血したりすることを脳外傷と言います。なかでも軽度外傷性脳損傷は、見た目には障害があるとわかりづらいことが多く、外傷後の社会復帰に支障をきたすケースが数多く見受けられます。
その受傷機転は様々ですが、追突事故でのむち打ち、スポーツや遊んでいる最中の衝撃、日常生活での転倒や転落など、意外と身近に危険が潜んでいます。
- 軽度外傷性脳損傷のケースは、頭部に衝撃を受けた後の一定時間の意識消失・損傷の直前直後における記憶喪失 放心あるいは錯乱などの精神状態の変化 一時的もしくは恒久的な局所神経障害のいずれかの症状を引き起こします。しかし、意識消失や記憶喪失がいずれも短時間のうちに回復し、また画像診断や脳機能検査等で異常が発見されない場合があるため、心身の不調を脳の損傷として捉えてもらえないことがあるのです。
WHOの報告によると、脳損傷の10万人当たりの発生頻度は150~300人です。そのうち軽度外傷性脳損傷は9割を占めると言われています。そのほとんどが数か月から1年で回復しますが、1割程度の患者は一生後遺障害に苦しむと言われています。
- 後遺障害のひとつとして医学界で広く知られているのは、高次脳機能障害です。脳は私たち人間の運動機能、感覚機能、そのほかすべてをつかさどる司令塔です。中でも記憶や認知、感情、言語といった高次脳は脳の2/3を占めると考えられており、この部分を何らかの原因で損傷した時、高次脳機能障害が生じます。
- 脳損傷の部位によって症状は様々ですが、例えば記憶力が低下したり、注意散漫になったりといった認知機能の障害が挙げられます。また、外傷前に比べて怒りっぽくなったり、落ち着きがなくなったりと客観的に見て性格が変わったように思うことがありますが、これも人格機能障害という障害の一種です。
- これらの障害が後遺症として残った場合、仕事で重要なことを忘れる 運転中に事故を起こす 人間関係でのトラブルが多くなる等、社会生活の中で多くの支障をきたします。心身の不調を脳が原因だと理解してもらえないがために、周囲からは「怠け者」「精神異常者」といった目で見られてしまうこともあり、社会の中で孤立してしまうケースが多いのです。
たとえ高次脳機能障害があっても、静かな環境を整えると集中できたり、簡易作業なら問題なくできたりと、周囲のサポートがあれば就労や生活が可能なケースも多々あります。
しかし、脳外傷についての理解がまだ乏しいのが日本の現状であり、今後補償制度や社会の認識が変化していくことが期待されます。